『奇魂KUSIMITAMA』
第7號 600円

 歴史と文化を主題とした同人誌『奇魂』の第7號です。主宰を務める高坂相は京都在住の自由人。同人誌のほかにもホームページを運営したり、イベントを企画したりと、多忙な毎日を送っています。彼との交友が始まって2年ほど経ちますが、不思議な風格を備えた謎の人物です。同人誌も彼のネットワークを駆使した濃密なものに仕上がっています。
 さて、第7號の紹介に移りましょう。
 第7號のテーマは「アメリカ」と「地方文化」です。
 近頃「最後の超大国」としてのエゴが目立つアメリカ。優秀なデザイナーであり、主宰と互角の知性を誇る森利行が、美術という視点から、かの国が抱える歪みを抉り出しています。ちなみに第7號の奇抜な装丁は彼の手によるものです。
 もう一つのテーマ「地方文化」にも多彩な文章が揃いました。ソウル市内に忽然と現れた「中華街」のレポート、中国の女性と交わす古風にして純粋な恋物語、都市開発に翻弄される野生生物の行方、老舗テーマパークの不況打開案……、そして、ゲストである岡崎敏明の筆による「地方文化と物語」は、第7號最大の力作と言えます。地方文化とは何か?という根源的考察を展開しつつ、同時に九州地方のグルメエッセイをも兼ねている非常に読み応えのある作品です。
 ほかに、詩人の海老正廣の重厚な三島由紀夫論は、三島ファンにぜひ読んでいただきたい一作です。主宰自身も独自の保守論に加え、マンガ評・書評にて、健筆をふるっております。
 僭越ながら、今回も価格分の価値は十分にあると自負しております。弊誌について興味を覚えられた方や、購入ご希望の方は、お手数ですが『奇魂』ホームページをご覧ください。

(宣伝委員 宮村直佳)

ひと休み

『ぼちぼちいこか』
マイク・セイラー/作
ロバート・グロスマン/絵
今江祥智/訳
偕成社 1200円

 「人生七転び八起き」なんて言いますが、絶対、それ以上に転び、それ以上に起きてますよね。楽しみも、苦しみもあってこそ生きていられるのです。「あー、もうだめ!」と疲れきってしまった時、この絵本を読んでみてはいかがですか? 
 主人公は「チャレンジャーのかばくん」です。彼はいろんなことに興味を持ち挑戦するのですが、ことごとく失敗します。だけど、ただの「かばくん」ではありません。決してくじけず、これがだめなら次へ、それもだめなら次へと果敢に前へ進んでいくのです。だけど、時には心も体も休めることをちゃんと知っているのです。そこで「ぼちぼちいこか」の余裕が生まれるのです。
 内容はいたって簡単ですが、ここで使われている関西弁が、なんとも良いゆったり感を与えてくれ「ぼちぼちいこか」の気分にさせてくれるのです。私も、みなさんも、ひと休みしてみることは必要なことですよね。この絵本の世界は、新しい自分を、新しい力を見つけ出せる時空間なのかもしれません。
 絵本は、子供だけのものではありません。大人だからこそ理解でき、共感を持てるものなのです。


鈴木富美江●北海道在住の39歳。家事手伝い。「現在、児童文学の勉強中! 子供の頃漠然と読んでいた本にも新たな発見があって面白いです」
「ヘエ〜!」と言えるトイレの雑学がいっぱい

『トイレで笑える雑学の本』
プランニングOM〈オム〉/編
講談社+α文庫
680円

 私にとっての最近のヒット作品だ。
 恋愛・青春ものにはまりすぎたため、どことなく疲労を感じていた。「どこから読んでも楽しめる、力の入り過ぎない一冊!」とひそかにテーマを決め、本屋へと向かった。
 「そう、トイレの歴史は人類の歴史なのだ」とカバーの紹介文にあるように、生き生きとした世界中の人々とめぐり会うことができた。どんなお偉いさんでもアイドルでも、トイレとは切っても切れない関係なんだもの。知りたいけど知ることができなかった、トイレにまつわる素朴な疑問の数々。長編のドラマよりも、憎しみ合いにまみれた、重いどろどろな長編小説よりも、人間がリアルに感じられたというか。トイレをどういう角度から分析するかによって、果てしのない人間ドラマを見ることができる気がした。
 トイレから見た社会学といったような、雑学モノって結構あるが、すっとぼけたイラストともあいまって、お疲れの時、通勤ラッシュ時に、軽く読めるのがなによりもいい。
 「トイレの落書き研究、国民性、男女差」「もっともつらいトイレ、ナチス強制収容所」「溲瓶と茶道具の深〜い関係!?」「京のお嬢様の教養、立ち小便」
 見出しだけでも惹かれませんか?
 さらりと読めてしまうけど、かなりの雑学がいつの間にやら身になってます! 世界各国、時代を超えたトイレうんちく。コミュニケーションにも役立つはず。


すずきんこ●千葉県在住。「自宅から徒歩3分のところに図書館があるせいか、本って買うもの?? 借りるものよね??という感覚が、しみついてしまって離れない。欲張ってどっさり借りるせいか、いつの間にやら同時読みが当たり前になっていた」
大人の証

『1000日の夕食』
横山智佐
ソフトバンクパブリッシング
1800円

 横山智佐さんの『1000日の夕食』を読むと、「ああ、大人っていいなあ」と思う。
 21世紀になるまでの横山さんの1000日分の夕食を、写真とコメントで綴るこの本は、すごく自由が溢れている。女性で、一人暮らしで、しかも体が資本となる声優さんの食生活となれば、かなり気を配った献立なのだろうなあと思ったけれど、それ以上にすごく自由。コンビニの冷凍うどんを連日続けて食べても誰にも怒られないし、結果的にお菓子が夕食になってしまった、いわゆる「菓子飯」でも、まあいっか。ともすれば「今日は食べない」という選択もあるのだ。
 自分の夕食のメニューを自分で決められるようになった時が、大人になった証なんだなあ、と思った。


金田萌子●神奈川県在住の19歳。学生。「モー娘。のさくら組とおとめ組ってサクラ大戦の帝国華撃団とパリ華撃団みたいなものなのかなあ。♪走れー、高速のー。モー娘さくら組ー」
瑞々しい少年たちと一緒に過ごしたい!

『ネバーランド』
恩田陸
集英社文庫
514円
 恩田陸の描き出す少年は、本物以上に瑞々しいと思う。
 7月の暑い日だというのに、私は早くも年末にトリップした気分で『ネバーランド』を読んでいた。物語の中心人物である美国と、寮で年末を一緒に過ごすことになった寛司、統、光浩。彼らはそれぞれ事情を抱えていて、章が進むごとに一つ一つ明らかになっていく。
 少年たちは4人ともとても魅力的で、知り合いにいたらいいなと憧れる。けれどそれ以上に、自分もこの中に、この物語のステージ上に立って、少年たちと1週間を過ごしたいと思った。だって、まるでページからあふれ出すほど、彼らは表情豊かに動き回っているのだ。思わず私も混ぜてくれ、と飛び込みたくなるではないか。
 男の子っていいなあ、高校生っていいなあ。自分も高校生だった時が確かにあったのだけれど、こんなにもまぶしかっただろうか……。ああ、本当にうらやましい!
 私はいつの間にか10代を通り過ぎてしまった。今は時々、本というタイムマシンに乗って、自分が体験したよりもドキドキする世界を、覗きに行く。
真城サキ●岐阜県在住の22歳。大学生。「週に1回は本屋に行きます。買いだめすることもあるのでカゴを置いてほしい!
目に見えないものが大切

『きれいな色とことば』
おーなり由子
大和書房
1300円

 私が最初にこの本に出会ったのは、ラジオからの声だった。『ポップライブラリー』というラジオ番組で、本の朗読と音楽をあわせたものだった。ラジオの朗読というのは、今まであまり耳にしたことがなかったので、その分、真剣に耳をすました。一つ一つのフレーズが、自分の心に語りかけるように入ってきた。それがなんとも、心地よかったのだ。そして、何度も録音して聴いているうちに、実際にはない本を、手にとって読んでいるような不思議な感触を味わった。
 それから月日が流れ、この本のことなどまったく忘れかけていたある日、図書館に立ち寄って『きれいな色とことば』という題名の本が目に入ってきた。手にとってみると、なんと偶然にもラジオで耳にしたあの時の本と一緒だった。なんだか懐かしい友に再会したような感じで、うれしくて一気に読んだ。ラジオでは、特に繰り返し聴いていたのが、『きれいな色とことば』の中の「四角いむらさき」というタイトルの話だった。実際に自分で読むと、この話だけは、なぜか身がひきしまる思いでいっぱいになった。
 物事が伝わる時、ことばが伝わるだけでは、ない。目で見えるものや、ことばだけに頼って、安心していてはいけないという作者の思いが、自分を見つめ直すきっかけを与えてくれたのだ。なにか、遠い昔に置き忘れてきたものを、思い出させてくれるものがあったのかもしれない。
 普段は何気なく見ている色でも、言葉にするといろいろな想いになり、広がる。この本に出会えたことによって、目に見えるものの向こうにある、目に見えないものの大切さが、今、ほんの少し、見えてきたような気がしている。


河野光美●奈良県在住の35歳。保育士。「自分の中に好きな色があるように、心やことばにも色があることを知りました。私も毎日の中にたくさんの“色”を見つけていきたいと思います」
もう一度好きにならせて……


『菊千代抄』

(『あんちゃん』所収)
山本周五郎
新潮文庫
552円

 今、とても後悔していることがある。
 ある人を、ひどく傷つけてしまったこと。その人の誠実な優しさを信じることができず、裏切ってしまったこと。
 その人は責めるでもなく、怒るでもなく、ただ「しばらく会わないほうがいいね」と静かに言った。
 こんな時でも相変わらず優しい言葉を使うなんてずるい、と思いながら、「ああ、こういうところを私は好きになったんだっけ……」と自分の素直な気持ちを再確認した途端、大量の涙が一気に目から溢れ落ちた。
 久々の涙はしょっぱくて、涙も体の一部だったことを実感しながら、泣きながらも冷静に思った。「この体ごと、彼は愛してくれていたんだな」ということ。今さらながら感動。取り返のつかない過ちゆえの後悔の中でさえ、私は彼の優しさに包まれているような気がした。
 思い出したのは、山本周五郎の『菊千代抄』だった。
 男として育てられた主人公の菊千代が、よりによって淡い気持ちを寄せていた使用人の半三郎に、女であることを知られていたことに気づき、恥ずかしさから彼を斬り殺してしまう。その罪の意識と後悔に苦しんだ何年か後、実は生き長らえ、なおかつ遠くから菊千代を見守っていた半三郎に再会し、「私を女にしてほしい」と告白する「後悔」と「修復」の短編である。
 人には、愛しいと思った人にほど見せられない傷がある。菊千代の、男として生きなければならない義務感からの葛藤がそれであったように、私の場合、男性に対する不信感がそれだった。
 どうか私にも早く、菊千代のように「修復」のチャンスが訪れてくれれば、と思う。私も彼に「女にしてほしい」と伝えたいのだ。
 「もう一度、女にしてほしい」「もう一度、好きにならせて」と。
ばっくす●宮城県在住の24歳。会社員。「ちょうど今、『仙台文学館』で、山本周五郎展が開催されている。私はそこを訪れようと思っている。まだ、心がちょっぴり痛むと思うけれど……」
家庭料理はこうでなくちゃ!


『VIVA LA PASTA
パスタは陽気に』

ジローラモ・パンツェッタ
サルヴァトーレ・クオモ
柴田書店
1800円

 日本に暮らしていて、数少ない「ヨカッタ」の一つは、「その気になれば、世界の料理がいながらにして食べられる」ことではなかろうか。街へ出れば、フレンチやイタリアン、中華はもちろん、遠くは中近東、アフリカ、南米の料理まで、勇気と好奇心とお金があれば、なんでも食べることができる。
 しかし、日本人が寿司や天ぷらを毎日食べてはいないように、「お店では食べられない」家庭料理のなかにこそ、本物の味がみつかるのではないだろうか。むしろ主婦にとって、毎日家族のために「笑顔」で食事を作るためには、「シンプル」というブランドこそが必須条件である。
 し・か〜・し……! ワタクシ、書店の料理本コーナーの前で両こぶしをグッと握りしめること2度3度。
 「なんだよー、家庭料理っていっておいて、この十何種類とかも必要な材料っていうのは……!」である。だいたいこの手の本の著者は、年配の料理研究家兼「主婦」の方が多いのだけど、同じ「主婦」の「家庭料理」でも感覚がぜんぜん違う。彼女にとっては「日常のレシピ」かもしれないが、私などには材料も手順も「ものすごく痛いレシピ」に思える。
 この本は料理本らしくない自然な装丁で、なんか写真集みたい、と思い手にとってみた。見たことある人が写っていると思ったらNHKの『イタリア語会話』に出演していたジローラモさん(今はCMでも有名ですね)だった。同郷のサルヴァトーレさんという方と出したレシピ集で、私は、パスタの本場のイタリア出身の男性によるレシピということで、信頼できそうな気がして買ってみたが、これが大正解だった。
 材料も作り方も驚くほどシンプルで、それなのに美味しい! 料理を始めたい男の人へもオススメです。
 「ペンネ・アッラビアータ」、美味しいですよ。
甘井サブレ●神奈川県在住の39歳。主婦。「パソコンを始めて約1年。ようやく最近、自作の詩のHPを作成しました。でも感想ほとんどもらえず。トホホ。おばさんの書く作品は魅力なしかあ?」


春菜かおり●鹿児島県在住の22歳。「ほかの何かを我慢しても、本を買うのだけは我慢できません。彼氏いらない、本がほしい。ブランドいらない、本がほしい(笑)」

 

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