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井筒 我々の世代はほんとどうしようもなくてね。俺ね、70年代の初め、大阪の難波でプー太郎してるときに、LSDのごっついのやらされたことあんの。俺とらもさんの共通の先輩っていうか、お兄ちゃんがいてんねんけど、難波にその人らが集まる巣窟があったわけ。そこにロスの女がおったんや、メキシコの女やねん。そいつがね……。
アトム で、どっちなんですか? ロスなんですか、メキシコなんですか?
井筒 ロスに住んでるメキシコ人(笑)。
鮫肌 またあやしいですね(笑)。
井筒 インディアンの血が混ざってるとかいうて、頭にクジャクの羽根つけてインディアンの格好しとるんですよ。その娘が「これ、すごく効くのよ」いうて、5ミリ四方ぐらいの、ブラウンシュガー色したセルロイドみたいなヤツ出してきて。舌の上にぴっと置いて、「水で飲んだらあかん。紅茶で飲め」って紅茶作ってくれんねん。それ、じーっと待って、言われたとおりにその先輩と飲んだら、家が崩れてきてな。
一同 (爆笑)
井筒 壁がガンガン落ちてくる。「助けてくれーっ!」いうて。それで俺は外へ出たんや。もうパニックで一緒だった先輩がどこへ行ったかもわからへん。
アトム ラリってる二人がはぐれてしまった?
井筒 もうあれですよ、孤児や。
鮫肌 LSD孤児(笑)。
井筒 それ、大阪の豊中いう街の一軒家でやったんやけど、戻る家もないわけや。崩れてしもたんやから。それで、街中を歩き回ってね。
鮫肌 危ないなぁ。
井筒 そしたら、大工さんが4、5人で普請している家の前まで来たの。その大工さん全員がドクロ仮面みたいに見えるねん。
アトム それって真っ昼間にやったわけですね。
井筒 真っ昼間や(笑)。で、ドクロがみんなノコギリとかカナヅチ持って俺の方に来やがんねん。殺されると思って逃げて。
アトム 追いかけてきたんですか?
井筒 そう。多分俺がなんか叫んでたんやろね。で、助けようと思って追いかけてくれてたんやろうけど。怖くて。その後の記憶が全然ないんやけど、パッと気づいたら豊中の警察署やねん。救急車に乗ったのは覚えてんねん。そのときも周りにドクロがおったわ。
鮫肌 それって救急隊員でしょ(笑)。
井筒 で、その次、意識が戻ったら精神病院にいた。6人部屋なんですよ。なかなかないで、こんな経験(笑)。精神病院にはこん棒を持ったようなヘンなおじさんとかいたけど、もうドクロには見えなかった。
鮫肌 やっと抜けたんや。
井筒 それで「俺はまともやから出せ!」ってかけあったんやけど、「そういうふうに言わないの」とか完全にキチガイ扱いですよ。
鮫肌 だいたいキチガイって「俺はまともだ」って言うもんね。
井筒 巣窟の電話番号を伝えて「そこへ電話してくれ」と頼んでも、「そんなデタラメ言わないの」とかそんな対応や。
アトム 結局どうやって出はったんですか?
井筒 先輩たちが居場所を探し出してくれたんや。その先輩は、地下鉄の御堂筋線を何十往復もしてたらしい。その人も言うてたよ、「ドクロだらけやった」って。その話を聞いたとき、思わず手ェ握り合ったもん(笑)。
アトム らもさんはLSD体験ないんですか?
らも 似たヤツは1回あるけどね。
アトム 似たヤツというと?
らも 大阪のミナミで遊んでたら、外人が「エォエスディ?」とか言うて近づいてきたんよ。「いえす・あい・どぅー」ってこたえたら、LSDのシートを出してきてね。「いくつ欲しい?」って訊くから、「20個」いうて。シートにはミシン目が入れてあるわけ。その1個が5ミリ四方ぐらいで。
アトム で、20個もですか?
らも 友達多いから。それを家で友達と飲んだんだけど、しばらくしたら体中が、ムズムズムズムズしてきて。でっかい音で音楽かけて6、7人で踊りだしたんよね。踊りだしたら、もうとまらへんねん。で、何時間もずうーっと踊ってたわ。トイレに入ったとき、壁紙の模様がむにゅむにゅむにゅーと動いたりそういうのは見たけど、あれはなんかホワイト・ライトニングというヤツで、本物のLSDじゃなかったみたいね。
井筒 俺の場合、家屋崩壊やったもんね。家が崩れる前までは、メキシコ人の手の血管がトカゲになって浮き出してきたり、外の天気が、晴れかと思うと、雨、台風、また晴れ……みたいに3秒おきに変わったりしてたんやけど。


アトム 鮫肌さんはそういうドラッグ体験とかは?
鮫肌 僕、全然ないんですよ。
らも ええっ、パンクのくせに!?
鮫肌 いまのパンクスってみんな健全ですよ。酒ばっかりですもん。
井筒 酒じゃトカゲ見えんぞ。
鮫肌 トカゲは見えませんね。ゲロ吐くくらいですよ(笑)。
井筒 ゲロはいいね。
らも 俺がアルコール性肝炎っていうのになって、35歳で入院したときね。その入院する前に吐いたゲロっていうのがすざまじかったんや。
鮫肌 どんな色、どんな形状だったんですか?
らも プリンをグチャグチャってしたみたいな。
井筒 茶碗蒸しみたいなヤツやろ。茶碗蒸しゲロって面白いんだよ。
アトム 僕が役者してた「かっぱのドリームブラザーズ」って劇団で、テーブルに20個くらいプリンを並べて目にも止まらぬスピードで食べるってのを舞台でやったことあるんですけど。一日昼夜2ステージあるとき、昼の公演が終わったあと、夜の公演で食べられへんかったら困ると思って、もどしたんですけど。あの喉ごし、行きと帰り同じでしたわ。
井筒 ええなぁ、その話も(笑)。維新派って劇団あるでしょ。その昔、まだ日本維新派っていってたころやけど、俺、あそこに出入りしてフィルム撮ったりしてたのね。そのときの舞台のクライマックスがゲェやねん。役者全員が一升瓶1本の水飲んで、全員が飲み終わったら、せーの!で一斉に吐く(笑)。一升水飲むの、10分、20分いうてものすごい時間かかんねんね。
鮫肌 そんなかかるんですか?
井筒 かかるかかる。で、飲み終わったら、松本雄吉っていう演出家兼俳優が「おもむろに!」とかなんか言うの。その合図で一斉にゲェや。
鮫肌 おもむろに(笑)。
井筒 それを何キャメかで撮ったよ。あれはおもろかったなぁ。そのとき、雄吉さんに「お前もやれ」「気持ちわかってくれ」とか言われたわ。誰がわかるかぁ思たけど(笑)。役者も公演が始まる前にいろいろ食べたりしてるやん。そんなんも一緒に観客のところに飛んでくねん。
アトム うわーっ。
鮫肌 かかるんですか?
井筒 かかるかかる。出るもん、勢いよく。あれは一升の(一生の)思い出やね(笑)。あれにはどんな芸も勝てないですよ。
鮫肌 さっき楽屋でもゲロ話をしてたんですけど、みんなが吐いたゲロをポラロイドで撮って写真集にしたら面白いんじゃないかって。ゲロにもそれぞれ性格があると思うんですよ。魚好きの人と肉好きの人とじゃやっぱりゲロの表情も違うでしょ。そういうので写真展とか開いたら面白いんじゃないか、と。
井筒 面白い思うわ。らもさんがピーナッツ食いまくって吐いたゲロとか(笑)。
らも 俺は常に吐き気と闘ってるからね。
鮫肌 そんなにゲロ吐いてるんですか?
らも 咳止めシロップを飲んでるやろ。
鮫肌 まだ飲んでるんですか?
らも 最近また始めたんや。
鮫肌 あんなんやめてたはずですやん。ええ年してそれはないでしょう(笑)。
らも 咳止めシロップは普通の吐き気っていうよりじわじわーっとくる。営業マンしてるときに、クルマ運転して得意先に行くじゃない。得意先の前でクルマとめて、『あれ、なんか胃のあたりがむずむずするけど、いつ飲んだんやっけ……』とか思ってるうちにブワアアーッってクルマの中で吐いてしもた。フロントガラスもなにもゲロでべちゃべちゃや。通るOLとかヘンな目で見るんよ、俺の方を。
井筒 誰だってヘンな目で見るわ(笑)。
らも それにしても咳止めシロップは高いな。
鮫肌 いまいくらするんですか?
らも んーとね、ひと月きちっとやってたら、15、6万円はかかる。
井筒 そんなにすんの!
鮫肌 いまってラリる成分が少ないんでしょ。昔って1本飲んだらすぐラリりましたよね。
らも というか、体の方に耐性ができてくるから、飲んでも効かんようになってくるの。だから、どんどん量を増やすことになるやろ。で、薬局行って「咳止めシロップ10本ください」いうと、「お客様、それほどはお売りできません」ってことになる。
鮫肌 僕がらもさんのとこに居候してたころ、よく買いに行かされましたもんね。らもさんが行くと、もう駅前の薬局で売ってくれないんですよ。で、僕が健全な青少年のフリして「すみません。3本ください」って。向こうも顔なじみじゃないから売ってくれるんですよね。で、「らもさん、手に入りました」って渡したら、「ありがとう」って駅でくーって飲んでましたもん。こんなに咳止めシロップ飲むの早い人おれへんでっていうぐらい、見ると、もう飲んでるんですよ。
らも でも、あれはやめたほうがええな。とにかく高いわ。体にも悪いし。まぁ当たり前の話やけど(笑)。
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