2004/09/06 UPDATE

綾辻行人特集編集後記

文/岸本亜紀

撮影/花木陽子

 かれこれ4、5年前の話だ。綾辻さんに小説の仕事(単行本)のお願いをすると、
 「暗黒館が終わったらね」というお返事をいただいた。恐らくそのころ、そういわれた編集者は数多くいたであろう。でも、私は何より綾辻さんの小説の大大ファンなのだ。今書くのは無理と言われようが、なんとか仕事をご一緒させてもらいたい……その一念で、『ダ・ヴィンチ』の企画を通して綾辻さんにひたすら近づくことウン年。その間、一緒にカートレースをしたり、カラオケ大会を開いたり、温泉行ったり、と一見遊びと誤解されるような企画にお付き合いいただいた。
 「雑誌の仕事で息抜きしていただいて、すっきりとした気持ちで本業の小説に帰ってほしい」という気持ちからだった。が、その実、数年間、一緒に楽しんでいたことも事実だ(でも、途中、『YAKATA』の攻略本や『安楽椅子探偵シリーズ』など、お仕事もたくさんさせていただいた)。その間、進んでいるのか進んでいないのか不明だった「暗黒館」は『IN★POCKET』で連載という形になった。よくぞ決心された!と私は驚いた。読者の厳しい視線にさらされながら、自らプレッシャーを買って出るなんて!綾辻さん、頑張れ〜カラダ壊さないで〜ということで、私は休憩プランを今まで以上に激しく提案しようと試みたが、もはや一分の隙もないほどに、綾辻さんは自らを追い込んでおられた。こうなれば、ただ気持ちで応援するしかなく、”暗黒館が終わったら”『ダ・ヴィンチ』誌上で大紹介を企画しようと、その日をずっと待っていた(しかしその間、『幽』に短編を必死で頼んで書いていただいたりもしたが)。そして、晴れて刊行の目処が立った。推敲に推敲を重ねる綾辻さんだが、今回はそんなに待ってくれなかったそうだ。インタビュー当日に偶然ホテルのカフェで綾辻さんを見かけたのだが、傍から見ていても憔悴寸前!でも頑張るしかない!という勢いでゲラ戻しをされていた。それは本誌インタビューでも話されているので是非読んでほしい。
 さてさて、その「暗黒館」だが、本当に傑作である。綾辻ファンであれば、これまでの館シリーズをすべて読み返したくなるだろう。なにしろ中村青司の……と肝心なことは何も書けないのであるが……。そして登場するキュートなシャム双子。なんともかわいらしく、美しい。綾辻さんのミステリーへの愛が随所にちりばめられた総決算ともいえる傑作。綾辻さんが奏でるダークで繊細で美しい交響曲の調べにカラダを任せ、悪夢とも幻ともいえる暗黒館の夢を見る・・・・・・そんなゴシックな夜を過ごせる素晴らしい作品の誕生だ。みなさん、ゆっくり味わって読んでくださいね〜。

編集K
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